がん治療とお口の関係
現在3人に1人が「がん」と診断されています。その内の2人に1人が「がん」で亡くなっています。それだけ「がん」は私たちにとって身近な疾患とも言えます。
近年、このがんの治療を行う際にお口のケアが重要視されていることをご存知ですか?
がん治療には抗がん剤治療による副作用や合併症が伴います。またそれはお口の中にも高い頻度で現れます。お口の副作用は、口内炎などの痛みで食事や会話を妨げるだけでなく、免疫力の低下からお口の細菌による感染を引き起こしてしまう場合もあります。結果として抗がん剤の投与量の減量や治療スケジュールの変更などがん治療そのものまで影響を及ぼしてしまいます。
またがんに限らず、全身麻酔で手術を受ける患者さんは、人工呼吸器のチューブが口から喉を通して気管の中に挿入されます。この際、気管のチューブを通して肺に入り込んだお口の細菌が、術後肺炎の原因となる場合があります。
以上の事は事前にお口のケアを行い細菌を減らしていくことによって、手術中や手術後の感染や合併症を減らしていくことができます。
がん治療前の口腔ケア
がん治療中に起こるお口の副作用への対応は、その時に対応するのではなかなか間に合いません。その為、治療を始める前にあらかじめお口の中を清潔にして、トラブルが起きにくいように準備することが大切です。では実際に治療前にどんなケアを行うのでしょう。
①お口の中の検査
大きなむし歯や重度の歯周病など、がん治療中にトラブルになりそうな歯が無いかをチェックします。もしそのような歯が無いかをチェックします。もしそのような歯があれば主治医の先生と相談しながら、最低限がん治療が落ち着くまで問題なく過ごせるように、応急的な治療を可能な範囲で行います。
②お口の中の清掃
お口の中の細菌感染を防ぎ、治療時のトラブルを抑えたり軽くしたりするために一番大切なのは、「トラブルを引き起こす原因になる細菌の数を減らすこと」です。細菌の数を減らすためには、歯科のクリーニングの機械を使って歯石やプラークを徹底的にきれいにする、お口の中の大掃除が必要です。
③セルフケア指導
お口の中の清掃が終了したら、その状態を保つための「正しい歯みがき」が重要になってきます。歯医者さんでどんなにお口をきれいにしても、アフターケアーができていないと、すぐに細菌が繁殖してしまいます。患者さんご自身によるお口の管理(セルフケア)がとても大切です。歯医者で指導を受けた「正しい歯みがき」によって、効率よくお口の清掃を保ちましょう。
Q&A
Q:歯の治療は、がん治療が始まる最低何日前まで行えばいいですか?
A:2週間前までには歯科を受診しておきましょう。また前述の通り、日頃からお口のメインテナンスや、がん治療中も継続して口腔内を清潔で良好な環境に維持するよう努めることが重要です。
がん治療中の口腔ケア
抗がん剤治療が始まると、血小板や白血球の数が一時的に減少し感染症にかかりやすくなります。がん治療中にどうしても歯の治療が必要になった場合は血小板や白血球の数を確認して行う必要があります。主治医の先生と相談しながら進めていきます。
〉〉がん治療中に入れ歯をしている方へ
入れ歯があたって粘膜に傷や痛みが出てきたら歯医者さんに相談しましょう。入れ歯の内面に保湿ジェルを塗ると乾燥が改善されて痛みも軽減できます。
また入れ歯には目に見えない細菌がたくさんついています。毎日寝る前は入れ歯をしっかり磨きましょう。
入れ歯の洗浄剤を使用すると歯ブラシでは取りきれない細菌や臭いを取り除くことができます。洗浄剤から取り出したら流水でしっかり洗いましょう。